連載第1回: 新シャフト「NEXGEN E.I.F」

まったく新しいコンセプトのシャフト

一部のゴルファーのあいだで話題沸騰の「黄色いシャフト」が8月23日にゴルフパートナーから発売された。一部のゴルファーとは、私も含めて黄色いシャフトを打ったことのあるゴルファーを指す。つまり1度でも自分で打ったことのある人は、みな一様に市販されるのを待ち焦がれていた。そういう意味で話題沸騰なのである。

黄色いシャフトは開発者・櫻木博公氏が3年半の歳月をかけてようやく完成にこぎつけた、まったく新しいコンセプトのカーボンシャフトである。櫻木氏がいう。

「これまで飛ぶクラブを作ろうとするとヘッド重量を重くするか、シャフトを伸ばすしかなかった。しかし、重くしても伸ばしてもシャフトがたわみすぎてタイミングを合わせにくくなる。それを修正補強するとフレックスを硬くしないといけなくなり、非力なゴルファーには使いにくくなる。だから飛ぶクラブというと、つまるところ力のある飛ばし屋にしか使えなくて、非力なゴルファーはいつまで経っても飛ぶクラブを手にすることができなかった。このジレンマを克服するのに3年半かかったのです」

コンセプトは、力のある人しか使えないクラブを技術によって力のない人でも使えるようにする、というもの。目をつけたのはシャフト自体の性能の見直しだった。

「剛性値の上げ下げや、トルク・重量などの配分の調整など、シャフト全長を4センチ刻みで試作して試打テストを繰り返す。46インチシャフトだけでも合計31回繰り返して完成しました。シャフト自体が作るエネルギーをゴルファーのスウィングスピードに関係なく使えるようにした、まったく新しい発想のシャフトです」

ターゲットは技術はあるのに飛ばない人と、飛ぶけれど曲がる人

そこまで徹底して試作・試打を繰り返したのにはわけがある。

若い頃にゴルフに夢中になってシングルまでいったような人たちが、歳をとって飛ばなくなり、プレーそのものがつまらなくなったと嘆いている。この人たちに飛ばす快感を思い出させてやれば、もう1度ゴルフ場に戻ってくれるだろうし、そうなればゴルフ界の活性化にもつながるはず、という強烈な信念が櫻木氏にあったからだ。

「そういう人は、もともとスウィングの技術は持っているのです。ただ体力が落ちて体が思い通りにならなくなっただけ。それなら体力の落ちた分をシャフトでカバーしてやればいい。それが『シャフトの開発』に専心するようになった一番の理由です」

今回のターゲットユーザーである「若い頃にシングルまで行って、歳をとって飛ばなくなったゴルファー」は身近にいた。櫻木氏自身である。

「そう、私自身が飛ばなくなったゴルファーの悲哀を一番よく知っている。だから中途半端なことでは妥協したくなかった。そのために3年半もかかったのです」

はたして、従来のシャフトとはいったいどこが違うのだろうか。

非力な女子プロは、なぜ飛ばせるのか?

それを説明する前に1つだけ考えていただきたい。

専門家によると、男女の「筋力」を比較したとき、65歳の男性と26歳の女性はほぼ同じだという。筋力が同じだと振れるクラブの重さや長さも同じになるから、ドライバーの飛距離はほぼ同じになる。実際には一般女性用のドライバーは男性用より軽くて短めなので、まったく同じというわけにいかないが、おおまかにいって一般女性ゴルファーのドライバーの飛距離は160~170ヤード。65歳の(飛ばなくなった)男性は170~180ヤードだから、ほとんど同じといってよいだろう。

ところが同じ女性でも、女子プロは230~250ヤード飛ばす。なぜだろうか?

女子プロが特別に筋トレをしているからではない。腕相撲をするとわかるが、大半の女子プロは65歳の男性に負けてしまう。つまり女子プロといえども筋力は65歳男性と変わらないのに、女子プロは65歳の男性より50ヤード以上飛ばす。これはなぜだろう? みなさんに考えていただきたいのはこのことである。

結論を先にいえば、この差は「シャフトを上手く使っているかどうか」による。つまり、女子プロは65歳の男性よりもシャフトを上手く使って非力さをカバーしているのだ。

シャフトを上手く使うとは、どういうことだろうか。

ある程度、ゴルフを長くやっている人なら、シャフトに「しなり」があることはご存知だろう。この「しなり」と、しなりがMAXになった状態の「タメ」によってシャフトにエネルギーを蓄え、そのエネルギーを「しなり戻り」させることによってインパクト時のヘッドスピードを加速させてボールを遠くに飛ばす。

これがシャフトを上手く使っている女子プロの打ち方である。この打ち方を体得するには、それなりの技術がいる。というか、飛ばし屋といわれるパワーのあるゴルファーは、ほとんどの人が「タメ」と「しなり戻り」を使ってボールを遠くに飛ばしているのである。

「シャフトが一番しなった状態が『タメ』で、タメによってシャフトにエネルギーが蓄えられます。一方で、タメはシャフトを柔らかくすると簡単に作れますが、タメによってシャフトに蓄えたエネルギーを使うには、しなったシャフトが戻ってくるまで待たないといけない。つまり『しなり戻り』がインパクト時のヘッドスピードを上げ、ボールに強い衝撃力を与えるのに不可欠なのです。今回開発したシャフトは、いま説明した①『タメ』によってエネルギーを蓄えることと、②『しなり戻り』によってヘッドスピードを上げて強い衝撃力を生む、という2つのことを同時に達成した。そこが画期的なのです」

説明が長くなるが、大事なことなので、もう少しお付き合いいただきたい。

従来のシャフトは、フレックスの硬いSやXシャフトを非力な人が振るとタメができない(エネルギーがたまらない)ために飛ばすことができず、フレックスの柔らかいRやLシャフトは、タメはできても戻りが遅くてタイミングを合わせにくく、芯を食ったボールが打てなかった。その二律相反する課題を克服して「タメ」と「しなり戻り」をシャフト自体で瞬時に作るようにした。これがパワーの衰えたシニアゴルファーや、もともと技術のない非力なゴルファーでも飛ばす快感を味わってもらえるようになった一番の理由である。 冒頭で述べた、力のある人しか使えないクラブを技術によって力のない人でも使えるようにする、という「黄色いシャフト」のコンセプトの真意がここにあった。

慣性エネルギーがこれからのシャフトを変える

こうして、従来のシャフトの常識を覆す「超手元調子&超軟硬シャフト」が完成した。

商品名「NEXGEN E.I.F(Energy Inertia Force)」は、ゴルフパートナーより新発売される。Energy Inertiaとは「慣性エネルギー」のこと。ポピュラーではないがゴルフクラブ業界では以前から知られている一般名詞だ。

飛ばし屋といわれる人は、みなこの慣性エネルギーを利用している。前述した「タメ」と「しなり戻り」のことである。

「黄色いシャフト」は、そのタメとしなり戻りを非力な人、いまはもう飛ばし屋ではなくなった人にも使えるようにした。櫻木氏自身の、もう1度飛ばし屋といわれたかつての快感を取り戻したいという執念が結実したシャフトといえる。

そのシャフトを前にして、過日、「ALBA」誌の取材・撮影が行われた。私もコメンテーターとして48インチのドライバーを試打させてもらったが、自分のドライバーより20ヤード以上飛んでいた。しかも、まったく曲がらない。

もともと私は曲げて飛ばしたいタイプなのだが、かなり意図的にフックやスライスをかけたときに軽いドローやフェードが出るくらいで、ふつうに打てば真っすぐ飛ぶ。それも相当な高弾道で飛んでいく。いわゆるズドーンとした弾道の飛んで曲がらないボールが打ち出される。

67歳の私の従来の飛距離は平均210ヤードだったが、試打クラブは20球打ってほとんど230ヤード先のIPフラッグを超えていた。 あとからスウィングの連続写真を見ると、インパクト直前でシャフトにきれいな「タメ」ができているのが確認できた。

飛んで曲がらないは眉唾か? ぜひ試打して確かめて頂きたい

ALBAの記者にインタビューを受ける直前になって、櫻木氏がなぜか落ち着かない。どうしたのですか、とスタッフが問うた。

「いやね、いままで飛んで曲がらないクラブというと、みんなに眉唾されたんです。このシャフトは本当に飛んで曲がらないんだけど、それを強調すればするほど信じてもらえないのではないかと、逆に不安になってきたんです(笑)」

櫻木氏の不安はわからないでもないが、こればかりは実際にゴルファー自身に打ってもらわないと、ほかに解決策はない。そのために「黄色いシャフト」は、最初のうちは実際に試打して気に入った人にのみ販売される。

手間と時間はかかるが、じっくりとゴルファーのあいだに浸透するよう大事に売っていきたい、という櫻木氏の思いが伝わってくる。それだけの価値のあるシャフトだ。まずは試打会場で、あなた自身のドライバーと打ち比べてみてほしい。

【ライター】高橋健二:67才、オフィシャルハンディキャップ9。ゴルフ雑誌を中心にゴルフノンフィクションや試打レポートをリリースしている。

開発者:櫻木 博公(さくらぎ ひろたか)

1944年生まれ。20年以上前からゴルフクラブの輸入、販売に携わる。その後、クラブデザイナーの竹林隆光氏との出会いをきっかけに革新的なクラブを開発。現在は、ゴルフパートナーの顧問として「ネクスジェン」のクラブ開発を行っている。