連載第5回:ゴルフクラブにも”賞味期限”がある?

ゴルファーの皆さんは次のような体験はないだろうか。

新しいクラブを買って、最初の2~3ラウンドは、それまで使っていたクラブより明らかに飛んだ。ところが何ラウンドか回っているうちに飛ばなくなり、やがて古いクラブと変わらない飛距離に戻ってしまった。これを「ゴルフクラブの賞味期限切れ」と称している。

「おれなんか、パターの賞味期限は3ラウンドだからね」

そんなことを言う人もいるくらいだ。パターはともかく、クラブに関しては「従来のシャフト」では賞味期限があるのは、やむをえないことだった。

なぜ「従来のシャフト」には賞味期限があるのだろうか?

ゴルフパートナーから発売中の話題の「黄色いシャフト」(商品名:NEXGEN E.I.F)の開発担当者・櫻木博公氏は次のように説明する。

「私自身は、ゴルフクラブに賞味期限があるなんて考えたこともなかったけど、もしあるとしたら、クラブ開発者として次のような原因が考えられますね。まずゴルフクラブの機能を『方向性』と『飛ばしのエネルギー(パワー)』と『打つタイミング』に分けたときに、従来のクラブは『方向性』はヘッドが担当し、『飛ばしのエネルギー』と『タイミング』は人の手に委ねられていたんです。具体的には打球の打ち出し角やバックスピン量を左右するのはヘッドだから、ヘッドが方向性を決めている。これはわかるでしょう。これに対し『飛ばしのエネルギー』と『打つタイミング』は、人の力に頼っている。だからパワーのある人やタイミングをとるのが上手い人は、どんなクラブを使ってもよく飛ばせるし、芯でしっかり打つことができる。そこで賞味期限の話に戻ると、『方向性』はヘッドの話だから除外するとして、『飛ばしのエネルギー』と『タイミング』は、新しいクラブを買って、ていねいに打っている間はオーバースイングも打ち急ぎもないから、ちゃんと芯で打ててミート率が高いんです。これが大きい。ところが買ってから3カ月も経って慣れてくると、新しいクラブに変えて飛距離が伸びた人は『もっと飛ばしたい』と思うから、ていねいさが薄れてマン振りするようになる。従来のシャフトは全部、自分の力で飛ばしているんだから当然、そうなりますよね。これでタイミングもミート率も悪くなり、飛距離が元に戻ってしまう。これが賞味期限切れの第一のパターンです。もう1つのパターンは『これだけ飛ぶのなら、コントロールをよくしよう』と考えて方向性重視のスウィングに変えるようになる。当然、飛距離は抑えられるから、最初の頃より飛ばなくなる。この2つが賞味期限のメカニズムじゃないかと思います」

繰り返すが、「従来のシャフト」はゴルファー自身が一生懸命振らないと飛ばないシャフトだった。飛ばす仕事をするのは人間で、シャフトはお手伝いをするだけ。だから『飛ぶクラブ』といっても、飛ばせるのはもともと飛ばし屋の人たちだけで、飛ばない人は買い替えた直後は飛んでも、すぐに賞味期限切れで飛ばなくなるというパターンに陥った。

ところが「黄色いシャフト」には、その賞味期限がない。8月の新発売からすでに4カ月以上経っているのに、発売直後に差し替えた人たちが「いまもまったく飛距離が落ちない」というのである。

「それはシャフトの違いを考えてもらえば、当然ありうることです」

E.I.Fは「仕事をする」シャフト

再び、開発者の櫻木氏が説明する。

「これまで何度も説明してきましたが、黄色いシャフトはシャフトが仕事をする主役で、シャフトが勝手に飛ばしてくれる設計になっている。飛ばしのエネルギーをシャフトが生み出し、芯を食うタイミングもシャフトが作ってくれるよう設計している。だから非力な人や女性、飛ばしを諦めかけたシニアなど、飛距離が欲しいと一番願っている人たちが使ってちゃんと飛ぶし、いつまで経っても飛びが変わらない。ここが一番違うところですね」

つまりは飛びの感動が長続きする。

感動が続くと、人はそれを周囲に伝えたくなる。そのことは試打会を重ねるにつれてはっきりとわかってきた。発売して4カ月、E.I.Fシャフトはほとんど宣伝らしい宣伝をしていないのに、人づてに広がる「口コミ」で、試打会を開くと、どの会場も打席の空く間がないほどの大盛況なのである。

ゴルフ仲間や先輩に勧められて

試打会場に訪れる人の中でも最近多いのが、「ゴルフ仲間が使っているのを見て」とか「先輩に勧められて」というケースである。また発売直後にドライバーのシャフトを黄色いシャフトに差し替えた人が、新たにフェアウェーウッドやアイアンも黄色いシャフトに取り換えたいと試打に訪れるケースも目に見えて多くなった。これこそ飛びの感動が長続きしていることの証明といえるだろう。

2015年最後の試打会となった12月16日に開催されたロッテ葛西練習場(東京都江戸川区)での試打会は、そんな人たちで溢れかえっていた。

玉岡英敏さん(57歳)もそのひとりである。ゴルフ歴35年で、平均スコアが85前後という玉岡さんは、先輩が黄色いシャフトの愛用者で、先輩に勧められてわざわざ荒川区の自宅から試打会場を訪れたのだという。愛用のドライバーはテーラーメイドのR11。シャフトはFUBUKIのSを装着して、ドライバーの平均飛距離が230~240ヤードという飛ばし屋だが、時折右にすっぽ抜ける球が出るのが悩みだった。

果たして、黄色いシャフトを装着した試打クラブで打ってみた結果はどうだったか?

「いやいやいや、いきなり打ってナイスショットですよ。20球くらい立て続けに打ってみたけど、右にすっぽ抜ける打球が1つもない。第一印象はやわらかめな感じなんだけれども、打ってみるとしっかりしていてタイミングをとりやすい。球の捕まりはいいし、弾道も高く上がって伸びのある球が出る。これはいいねえ」

もともとドローが持ち球という玉岡さん。ドロー打ちゆえに時折出る右へのすっぽ抜けは致命傷になることも多かったようだが、安定した弾道で戻ってくる完璧なドローボールにいたくご満悦だった。

「小ぶりなヘッドが好きなんですが、右にふけるんです」

続いて打席に立った徳山博さん(64歳)も、一緒にラウンドした人が黄色いシャフトを使っているのを見て興味を持ち、ゴルフパートナーのHPで試打会情報を見てきたのだという。ゴルフ歴30年でHD12の徳山さんの愛用ドライバーはミズノMPクラフトにグラファイトデザインのSRシャフトが入ったものだが、悩みは「右にふけること」と語る。

「ミズノMPクラフトはヘッドが小ぶりで気に入っているのですが、歳をとってから飛ばなくなったうえに、捕まりがいまいちで右にふける球が多くて悩んでいたんです」

早速、45インチから、46インチと48インチと長さを変えて試打を繰り返す。ヘッドも、試打クラブの中にミズノMPクラフトはなかったもののゼクシオ、プロギアエッグ、テーラーメイドグローレ、タイトリストといくつかのタイプがあり、形状や大きさを変えて打ち比べた結果、45インチの長さが一番打ちやすいと評価した。

「いくつかのヘッドを打ってみて、どのヘッドも芯に当たって捕まりがよく、1発目から気持ちのよいドロー系のボールが安定して出ていました。ということは、どのヘッドも黄色いシャフトをつけているのだからシャフトがいいということですよね。いやあ、クラブはシャフトが大事だということを改めて納得しました」

徳山さんはその場で黄色いシャフトへのリシャフトを発注したが、その決め手になったのは、軽く振れてタイミングを合わせやすいこと、球筋が安定していることの2点だという。

「MPクラフトは小ぶりなデザインが気に入っているので、ヘッドを変える気はありません。でもシャフトを変えるだけで好きなヘッドが振りやすくなり、好みのドロー系の弾道で200ヤード以上飛んでくれれば文句なしですね」

控えめな徳山さんの願いだが、その願望は間違いなく達成されるだろう。

「ビッグバーサに不満はないが、もっと楽に振りたい」

田淵真幸さん(63歳)はビッグバーサの46インチが愛用ドライバー。現在でも飛距離は200ヤードを越えていて、飛距離に不満はないが、もっと楽に振れないかと思って試打会への参加を決めたのだという。

「昨年はドライバーだけで3回も買い替えたんです。やっと安定してきたんだけど、もっと軽く振って飛ばしたいと思って・・」

田淵さんのリクエストに櫻木氏が手渡したのが48インチの黄色いシャフトを装着した同じビッグバーサ。田淵さんは1球打って、シャフトをしげしげと眺めながらつぶやいた。

「え~、なにこれ。48インチなのにまったく長さを感じないで楽に振れるよ。タイミングも合わせやすいし、軽く振って凄くいい弾道のボールが出る。こんなの信じられないよ」

差し替え用のヘッド持参で試打会に参加

愛用のドライバーはホンマのべレスの45インチだが、わざわざテーラーメイドグローレのヘッドを持参して試打に訪れた人もいた。中野洋一さん(仮名・79歳)だ。現在のヘッドスピードは35m/sでドライバーの飛距離は170ヤード。

「ホンマべレスに不満はないのですが、球筋の安定と距離をもう10ヤード伸ばしたいと思ってきました」

と話しながら、グローレのヘッドに46インチの黄色いシャフトを装着した試打クラブを打つ。すると、とても79歳とは思えない軽やかなスイングから小気味よい弾道のストレートボールがポンポン飛び出す。

「いいねえ。安定感が抜群だな。シャフトがバラつかないのがいい。シャフト操作がやわらかくて自分の思い通りのイメージで振り切れる。打った感じが一定で、球筋が安定しているし、シャフトがスイングに安定感を与えてくれている印象だな」

もちろん、中野さんがリシャフトの発注をしたことはいうまでもない。

「櫻木さんに会いに来ました」

24時間営業のロッテ葛西ゴルフ場は、夜9時になっても打席に空きが出ることはほとんどない。3階建てで半円形の打席がずらっと並び、それがカクテル光線に映しだされた光景はまさに不夜城そのものだ。この日の試打会は18時から21時までの予定でスタートしたが、20時半を回ってから息を弾ませて駆けつけたのが森英昭さん(52歳)だった。

「私、櫻木さんに会いたくてきたんですよ」

勤め先から直行したのか、森さんはスーツの上着を脱ぎながら語り掛ける。ゴルフ歴2年半の森さんだが、ゴルフを始めたのはゴルフパートナーの文京音羽店(東京都文京区)で7番アイアンを練習用に買ったのがきっかけだという。ヘッドスピードは45m/s~47m/sで、現在のスコアは90前後というから、これからが楽しみなゴルファーだ。

「インターネットでドラコンプロの安楽さんの映像を見て、安楽さんのスイングを自分の中にイメージしながら毎日素振りをしているんです」

現在の愛用クラブはドライバーからアイアンまでNEXGENだが、ドライバーを黄色いシャフトに代えてから一段と飛距離が伸びたといい、この日はフェアウェーウッドを試打してみようと思って駆けつけたのだと話してくれた。

「道具に頼れるところは頼りたい」

「黄色いシャフトがいいのは35点のショットでもそれなりの結果を出してくれるところですね。私はまだ初心者なので、スタート直後は100点のショットが打てても、ラウンドの後半になると、疲れてスウィングスピードが落ちるんです。でも黄色いシャフトはスイングスピードが落ちてもシャフトが安定して飛ばしてくれるので、大崩れしなくて済む。それが凄くありがたいのです」

NEXGENのフェアウェーウッドは3番ウッドがロフト角15度、5番ウッドが同18度、7番ウッドが同21度だが、森さんは3本を何度も取り換えながら交互に試打した。ドライバーではドロー系の強い弾道の出ていた森さんのショットだが、フェアウェーウッドはいずれも真っすぐなストレートの球筋で200ヤード先の照明の落ちた奥のネットに突き刺さっていく。

「いいフェアウェイウッドですねえ。楽に振れて、クラブが簡単に飛ばしてくれる。私はまだ初心者なので、道具に頼れるところは全面的に頼ってやろうと思っているんです。だって道具はいいのだから、ミスが出たら自分のせいだとわかる。言い訳のできないところに追い込んでおけば上達も早いのではないかと思っているんですね」

どこまでも前向きで、ポジティブな森さん。NEXGENのE.I.Fシャフトはこのようなゴルファーに支えられているのだと思うと、開発者の櫻木氏ならずとも嬉しくなる。

飛ばない人をもっと飛ばせるゴルファーに、スライスに悩む人を曲がらないゴルファーにしたいという櫻木氏がE.I.Fシャフトに託した願いは、多くの感動を共有するゴルファーたちによって次から次へと口コミで広がっていることだけは間違いなさそうだ。

【ライター】高橋健二:67才、オフィシャルハンディキャップ9。ゴルフ雑誌を中心にゴルフノンフィクションや試打レポートをリリースしている。

開発者:櫻木 博公(さくらぎ ひろたか)

1944年生まれ。20年以上前からゴルフクラブの輸入、販売に携わる。その後、クラブデザイナーの竹林隆光氏との出会いをきっかけに革新的なクラブを開発。現在は、ゴルフパートナーの顧問として「ネクスジェン」のクラブ開発を行っている。